このカテゴリでは、会計や税務に関する色々なお話をしていきます。
最初は、「タックスヘイブン」についてお話します。
タックスヘイブンとは「税金避難地」のことで、税金天国ということではありません。
天国はヘイブンではなく、ヘヴンです。。。
タックスヘイブンは、税負担の低い国又は地域を指します。
日本の法人税等の税率は約40%ですが、世の中には0%の国も存在します。
ケイマン諸島とかバミューダ諸島では、税率は0%です。
そうすると、こんなことを考える人がいます。
ケイマンに子会社を作って、そこに売上を投げてしまえば税金ゼロ!
日本で売ったにもかかわらず、ケイマンで売ったことにします。
そうすると、ケイマンで税金が課されます。
課される税率は0%。
日本だと40%もの税金がかかるのにもかかわらず、
ケイマンであれば何億・何十億・何百億儲けても税金はゼロです。
これはおいしい。
ということで、多くの企業がタックスヘイブン地域に子会社を設立しました。
設立と言っても、私書箱が1つあるだけで実質的にはペーパーカンパニーです。
日本の儲けをケイマンに付け替えて、税金ゼロ!
は、企業にとってもはや当たり前のこととなっていました。
しかし、税務当局が黙って見ている訳がありません。
タックスヘイブン対策税制
というものを設けました。
これは、一定の税率以下の国で稼いだ利益は、日本で課税しましょうというものです。
簡単な例を出しますと、
日本:1,000の利益
ケイマン:300の利益
だとしましょう。
通常であれば、日本の税金は1,000×40%で400。
ケイマンの税金はゼロです。
そうしますと、合計で400+0=400が税金になります。
タックスヘイブン税制では、税金がかからなかったケイマンの利益を日本の利益とします。
つまり、
日本の利益:1,000+300(ケイマンの利益)=1,300×40%=520の税金
を課することができるようにする制度です。
これによって、いくらケイマンで税金を払わなくても、
その分を日本で徴収することができるようになりました。
とても画期的な法律だと思います。
ではここで「一定の税率」とはいくらか。
答えは・・・
20%
です。
(租税特別措置法施行令39条の14②、平成25年3月現在)
つまり、20%以下の税金しか課されない地域ではタックスヘイブン税制が適用されます。
逆に言えば、20%を超える税率であれば、タックスヘイブン税制は適用されません。
この20%の税率のことを「トリガー税率」と言います。
タックスヘイブン税制が適用されるトリガーとなる税率のことです。
以前、このトリガー税率は25%でした。
そうしたところ、オランダは25.5%の税率を打ち出してきました。
ギリギリのところでトリガー税率を回避してきたのです。
ほんと、イタチゴッコですね。
安い税率を打ち出す国というのは、企業を誘致するのが目的です。
企業は法人税以外にも様々なお金を落としてくれますし、雇用も生みます。
あまり強くない国としては、企業誘致はぜひやりたいものなんですね。
トリガー税率が下がったことで、税率を下げてくる国も出てくるでしょう。
オランダとか、追随するのではないでしょうかね。
ひとまず、日本政府としてはちゃんと日本にお金を落としてもらいたい訳です。
タックスヘイブンもそのために作られた制度です。
税務当局と企業の戦いは、これからも続いていきます。
ちなみに、税務担当者である私としては、明らかに税金負担を海外の安いところに
飛ばしてしまおうとしている企業については、もっと厳しい罰則を与えていいと思いますけどね。
日本の税金を払いたくなければ、日本にいなければいい訳ですから。